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更新日 2008-11-27 | 作成日 2007-11-14

公立中高一貫校の適性検査について

 

平成11年4月より公立中高一貫校の設置がはじまり、42都道府県で197校(平成18年度)が誕生しています。最終的には500校程度の設立が考えられているようです(「生活空間倍増戦略プラン」〈平成11年1月 閣議決定〉、「21世紀教育新生プラン」〈平成13年1月、文部科学省〉)。
 

 この公立中高一貫校の設立は、これまでの中学・高校に加えて、新たな選択肢として誰でもが中高一貫教育も選択でき、かつ、教育環境の一層の多様化を推進することを目的とするものでした。しかし、現実はどうでしょうか?関東圏で実質倍率(平成19年)を見ると、さいたま市立浦和中学校の24.91倍を筆頭に千葉市立稲毛高等学校附属中学校の20.28倍、東京都立両国高等学校附属中学校の9.28倍、東京都立小石川中等教育学校一般の8.36倍など、私立中学に勝るとも劣らない狭き門となっています。これでは新たな選択肢として誰でもが中高一貫教育も選択できるどころではなく、公立一貫校向けの受験対策が必要になり、実際に大手進学塾でも受験対策講座が設けられるようになっています。

 本コラムでは、次回から公立中高一貫校の適性検査問題を検討しながら、ご家庭でどのような勉強法をとればいいかなどについて考えていきたいと思います。


東京都立桜修館中等教育学院

 今回は平成18年度開校の東京都立桜修館中等教育学院の適性検査問題について見ていきます。
 なお、適性検査および作文の問題は東京都立桜修館中等教育学院のサイトからダウンロードができます(PDF形式)。
http://www.meguro-chuto-j.metro.tokyo.jp/


 適性検査(四十五分)は「思考力や思考過程、判断力、表現力を見る検査とする」という出題方針のもとで、大問2問(各200点)、小問7問で構成されている。大問1は「地図の読み取りとアユの生態を題材とし」、2は「身近な題材として自転車を取り上げ論理的に考察する課題」となっている。両問とも知識量を競うような通り一遍の受験勉強では対応でない、教科の枠を越えた、子どもの考えかつ表現する力を問う良い問題です。


 今回は大問1について取り上げます。(設問の詳細については上記のサイトにてご覧ください。)先生と5人の各班代表との会話文を読ませた上で、3つの問題に答えさせます。


 [問題1](60点)は地図の活用が中心になりますが、まず「代表的な名所見学コース」という課題をしっかり把握する必要があります。
 [問題2](80点)は会話文と地図をもとに、「みんなが利用しやすい図書館」をどこに建てればいいかについて自分の意見を記述するものです。なぜ自分がその候補地を選んだのか、また、そこにはどんな問題点があるのかをそれぞれ2つずつ書けばいいわけですが、それを与えられた解答欄の範囲内に自分の考えた通りにかつ簡潔に書くにはかなりの表現力が必要です。
 [問題3](60点)は会話文および表をもとにアユの塩分調節方法について具体的に説明する問題です。先生が説明する濃度の異なる2種類の食塩水とセロファンを使った実験をしっかり理解できるかがポイントです。


 以上の3問は材料を社会や理科の分野に求めていますが、本当に問われていることはどれも読解力と表現力です。出題方針にある「思考力」や「判断力」「表現力」とは与えられた文章を正確に読み取り、その情報に基づいて自分でその善し悪しなどを判断して表現することに他なりません。記述問題が大部分を占めており、判断はできてもそれを文章にすることができなければ解答に結びつきません。このことから表現力にかなりのウエイトが置かれていると言って良いでしょう。

東京都立両国高等学校附属中学校


 今回は平成18年度開校の東京都立両国高等学校附属中学校の作文について見ていきます。

 なお、適性検査および作文の問題は東京都立両国高等学校附属中学校のサイトからダウンロードができます(PDF形式)。
LinkIconhttp://www.ryogoku-fuzoku-c.metro.tokyo.jp/

 平成19年度の作文出題方針には「文章を読み取る力や、自分の意見を他人に伝える文章表現能力をみる」とあり、具体的には飯田朝子『数え方でみがく日本語』の文章をもとに、国語語彙に関する問題、筆者の考えを問う読解問題、筆者の考えに対して自分は賛成か、反対かを書く作文から構成されています。

 両国中学校は平成18年度の作文の問題に放送による聞き取り問題を融合させ、「話を聞き取る力、自分の意見を他人に伝える文章能力をみる検査」を試みました。近年、公立高校の推薦試験においても聞き取りを課す学校が見られるようになってきていますので、このような出題傾向にはこれからも注意が必要です。

 ところで、作文の課題として、18年度が敬語についての文章、19年度が日本語のものの数え方についての文章が出題されているように、日本語についての課題が選ばれています。これら分野の文章は教科書などでも接する機会があまり多くないものですので、そこから自分の意見をまとめて文章にすることは、小学生にとってはかなり難しいことと思います。

 近年、日本語についての書籍が多く出版されています。これはそれだけ日本の社会が日本語というものに関心を向けていることにほかなりません。また、マスコミなどでも、日本語(国語)力の低下が喧しく説かれています。このようななかで、その日本語(国語)力を身につける小・中学校の現場においても、これらの問題に優るとも劣らない関心をもっていることは十分に想像できますし、このような出題からもうかがい知ることができるでしょう。

 やはり、問われているものは小学校で身につけた日本語(国語)についての全体的な力なのです。塾などで教えてくれる読解テクニックでは到底、対応できない、地に足が着いた国語力とでも言ったらいいでしょうか、そのような国語力なのです。このような国語力を身につけるには学校や塾での学習だけではどうしても足りません。それには普段の日常生活において言葉についての関心や注意力を養うことが必要なように思われます。言いかえれば、受験勉強とは少し方向性の異なった勉強が必要なのです。

千代田区立九段中等教育学校

 今回は千代田区立九段中等教育学校の国語・作文に関する問題を見ていきます。

 なお、適性検査の問題は千代田区立九段中等教育学校のサイトからダウンロードができます(PDF形式)。
http://www.kudan.ed.jp/

 平成19年度の国語に関する問題は、前年度と同じように3つの文章(A「ビギナーズ・クラシックス 徒然草」、B「こども哲学 きもちって、なに?」、C「14歳からの哲学」)から構成されています。

 問1はAとB、BとCのそれぞれの文章で共通して訴えていることを一文でまとめる問題です。前年度は3つの文章から共通したテーマを見つけ出し、それぞれの文章の主張を一文でまとめさせており、九段の適性検査では読解問題の設問スタイルとして定着しています。このような問題は読解力を問うと同時に読み取ったことを一文にまとめる文章力をも問うことになり、読ませる文章が適切であれば良い設問スタイルと言うことができるでしょう。

 問2は3つの文章との関連から、「孤独でいること」について自分の体験に基づきつつ自分の考えを二〇〇字程度にまとめる問題です。文字数は二〇〇字と少ない方ですが、課題が果たして小学生にとって適切であるか若干、疑問に残ります。九段の傾向として、出題される文章も含めて抽象的なことに対する思考力を問う問題に比重が置かれているように思います。これは、小学生にとって決まり切った国語の勉強では身につけることの難しいものです。

 九段は国語に限らず他教科に関する問題も、読解力および記述力が大きな鍵となります。九段も他の一貫校と同じように、学習のベースとなる国語力が小学校六年間でどの程度に身についているかを見ようとする意図が伺えます。言いかえれば、このことは国語力が一番に問われていることに他なりません。そして、ここで問われている国語力は、公立小学校の平均的な授業だけでは身につけることがなかなか難しいレベルのものです。読書や文章を書くことが好きな子どもでなければ、公立学校にもかかわらずそのための勉強、つまり受験勉強が必要となってしまうのです。

 このことは当初の一貫校設立の目的に適ったことなのでしょうか。

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