教科書の音読
お子さんはお家で教科書を声を出して読んでいますか?
もしその習慣がないのなら、毎日、十分でもお子さんに教科書を音読させてください。そして、それを周りでお父さんやお母さんが聴いてあげてください。
お子さんはどんな読み方をしていますか。お子さんの読み方で注意して頂きたいポイントは、ひらがなのところを、とくに文末を丁寧に読んでいるか。この一つだけです。
教科書を音読させてみると、かなりのお子さんがひらがなの部分を曖昧に読んでいます。これは早く読み終えてしまいたいという気持ちや次に出てくる漢字の方に注意が向いてしまっているからと思われます。そして、音読がこのようならば、黙読ではもっといい加減な読み方をしていると考えて良いでしょう。これでは読解力など身に付くはずもありません。
音読する上で大切なことは、まずゆっくりと一字一字を読んでいくことです。その際、句読点は息継ぎの場所と考えてください。もし読めない漢字があったら、ふりがなをふってください。そして、毎日、わずかな時間でかまいませんので習慣となるようにしてください。そして、周りで聴いている大人が読んでいる内容をちゃんと理解できるようになったら、その子は内容をしっかり理解しながら読んでいるはずです。
音読の良さは他にもあります。耳(聴覚)を使うことです。黙読では目(視覚)しか使いませんが、音読は声にして出すことで口と耳を使い、それが脳を刺激し、そのはたらきを活性化させます。これは英語も同じことで、語学は音読の繰り返しが基本なのです。繰り返し声に出して読むことで内容の理解が深まり、漢字の読みも自然と覚えるようになります。また、無理をせずに暗記さえできるようになるでしょう。この目・口・耳を使った国語学習は、この頃、案外ないがしろにされているように思います。読書は黙読ですし、教科書も、学校の授業で何度か音読するだけで終わってしまいます。せめて義務教育の期間だけは家での教科書の音読を実践してください。
なお、音読は中学・高校の古典学習にも有効であることを覚えておいてください。
戻ることの大切さ
国語を苦手とするお子さんの学習のポイントについてお話しします。
それはその子に適した学力時点に戻ることです。
たとえば、小学校五年生のお子さんで漢字が苦手ならば、小学校三年生の漢字練習まで戻ってください。現在の学習指導要領では、三年生から学習する漢字が急激に増えます。そのとき、しっかりと漢字練習をしていればなにも問題は生じないのですが、高学年で漢字が苦手なお子さんはそのときの漢字練習がおろそかになっていたに違いありません。小学校で習得しなければならない漢字は、将来の高校進学、大学進学に向けての学習に必須のものです。そしてなによりも、読解力の基礎を身につけなければいけない小学校高学年の勉強に大きな悪影響を及ぼします。もし、このように漢字が苦手なお子さんがいたら、冬休みや春休みなどのまとまったお休みのときに集中して学習するようにしてください。
また、読解力が弱いと思われる場合も同じです。よく「読書をすればノ」とおっしゃる保護者の方もいらっしゃますが、読解力がないのに読書を強要しても子どもにとっては苦痛になるだけで、ますます国語が嫌いになってしまいます。まずはその子が理解できる学年の問題集を解くことからはじめてください。薄い問題集で、その子の学力には少し簡単な程度のものがちょうど良いと思います。そして、一冊が終わったら次の学年へと進めてください。
戻ることで現在の勉強がおろそかになるのではとご心配なさる保護者の方もいるでしょう。しかし、基礎ができていないのに、それよりもはるかに難しいことを勉強しても身に付きません。できれば長期休みのときを利用するのが理想的とは思いますが、日頃からも週末などに少しずつでも実践していただきたいと思います。
学校はもちろんのこと、塾でも戻って勉強をすることはまずないでしょう。それができるのは家庭学習だけです。もしお子さんが国語のある分野が苦手なら、それがいつから苦手になったかを突き止めてください。必ずその時点があります。そして、それがわかったら、その時点に戻って勉強をはじめてください。中学校より小学校高学年、高学年より中学年、苦手分野の克服は早いにこしたことはありません。のちのちのお子さんの負担を少なくするためにも、気づいたら、すぐ実践してください。
その子にあった勉強のしかた
子どもにはそれぞれ、その子にあった勉強のしかたがあります。しかし、なかなかそれがわからず、お子さんに無理を強いているケースを見かけます。
まず、お子さんの学力を知ることからはじめます。しかし、国語の場合、ことに読解力は学校のテストではなかなか把握しにくいものです。学校のテストは教科書の確認テストが基本ですので、文章内容も事前にわかっています。そのために正確な読解力は測れないとお考えください。
そこで、これはわたしが塾で行っていた方法ですが、もしお子さんがいま五年生なら、前学年、四年生の文章読解の問題をやらせてみてください。そのさい、問題集は教科書準拠でない、標準レベルの問題集をお使いください。
文章問題を解かせてみて正解だけに○をします。そして、何もヒントを与えず、間違った設問をもう一度、解かせてみます。違った文章問題でこのように二、三度繰り返してみて、二度目で全問正解に近い結果なら、現時点で基礎的な読解力があると考えていいでしょう。五年生の問題集で勉強を始めます。もし、不正解が正解より多いのなら、躊躇せずに四年生の問題集から問題を選んでしばらくやり直しです。また、全問正解、もしくはそれに近い場合でも時間がかかるようなら、そのペースが現在の学力とお考えください。いま、無理に時間を早くさせようとしないでください。また、前にお話ししたように、答えを書く字にも気をつけてください。これで大まかな読解力は把握をします。そして、その子の読解力にあったレベルで勉強をはじめるわけです。
ところで、文章読解の問題を解かせると、とにかく時間がかかってしまうというお子さんがいます。文章は理解しているようだし、まあまあ設問も解けるけれど、時間がかかるというお子さんです。そういうお子さんの場合、そこで「もっと早く解こう」と言うと、その途端に間違いだすものです。時間に気を取られて、内容の理解がおろそかになるからです。つまり、その子にとって、そのペースが現状ではベストなのです。ですから、最初はその子のペースで問題を解かせます。そして、勉強を繰り返すうちに(一ヶ月先でもかまいません)本人が文章読解に自信を持ってきたら、そこで初めて時間のことを言います。そのさい、前もって時間を計っておき、たとえば「いま二十分かかったけど、今度はそれよりももう少し早くやってみよう」と言うようにします。しかし、スピードばかりを求めないようにしてください。スピードより正確に文章を読み取ることが第一であることを忘れないでください。
「その子にあった勉強のしかた」という題でお話ししましたが、その子にあった勉強のしかたとは、その子にあったレベルとペースで勉強することなのです。決められた時間でどんどん文章を読んで問題を解いていくことが出来れば、それにこしたことはありません。しかし、大部分のお子さんは最初からそうは出来ません。
いまの読解力を正確に把握した上でその子にあったレベルとペースで勉強をはじめることが肝心なのです。
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